「ベトナム中部のIT都市『ダナン』のこれからの成長と現在を考えてみました.

ベトナムの都市「ダナン」をご存知ですか?ベトナムの中部に位置する港町ですが、近年、ダナンはIT産業の分野で世界から注目を集め始めています。IT都市として成長著しいダナン。今回は、これまでのダナン、現在のダナン、これからのダナンの3つに分けて考えてみました。

これまでのダナン

2000年以前のダナンは、漁業、水産加工、縫製、建材製造、観光などが経済を支えていました。港町のダナンは海産物も豊富に取れ、ビーチや自然も多く、観光資源にも恵まれていたため、元々ベトナム中部でも大きな都市でした。その後2000年代に入ると、ダナンは急速にIT分野を発達させていきます。

なぜダナンはIT分野で急成長できたのか。
それは以下の3つの要素が大きく影響していると考えられます。

1.ダナンは積極的にITに強い人材を市や企業をあげて育成していたこと。
2.海外や同じベトナムの都市ハノイやホーチミンと比べて人件費が安かったこと。
3.ベトナムは離職率が高い中で、ダナンの離職率は格段に低いこと

これらの要因によって、海外企業がダナンに建てた子会社やダナンの企業に海外企業からの仕事が来るようになりました。俗に言うオフショア(経費削減のために新興国や発展途上国の企業や子会社に業務委託すること)です。こうして、ダナンに新たにIT産業が確立されました。

現在のダナン

現在ではすっかり定着したダナンのIT産業。ダナンには約700社のIT企業が存在します。日本企業では富士通NTTデータなどがダナンに拠点を置きました。いくつかの大企業のほか、10~20人単位の企業が海外企業から業務委託され、ソフトウェアの開発をしています。

ダナンにも拠点を置くベトナム最大手のIT企業であるFPTは、2010年度は年に5200万USドルだった売り上げが、2018年度は3億7000万USドルに成長したIT企業です。ベトナムのIT企業の中でもFPTがこれだけ大きくなった一因は、人材採用や人材育成に気を配っていることがあげられます。

FPTでは人材の採用時にシステムエンジニアとしての能力だけでなく、必要不可欠な語学力を求められるほか、入社後も人材の育成に力を入れることで質の高い仕事を実現しています。また、自社の人材確保とIT産業全体の発展を促進するために大学も設立しています。ダナンのほかにも多数の国に活動の幅を広げていますが、ダナンの拠点は2010年~2016年の間を見ても、社員数は約10倍、売上高は約7倍と急成長を見せています。

ダナンには既に5つもの工業団地があるほか、2010年ごろからはダナン市と大企業などが協力して「ダナンハイテクパーク」という大規模な工業団地の建設を始めました。ダナンハイテクパークは、入居企業に対して投資優遇制度などを設けるなどして企業を誘致しています。ダナン市も行政から人材育成や、投資や海外企業が参入しやすい制度をつくるなどのIT産業を盛り立てるための取り組みを行っています。

このように現在は、ダナンの企業と行政が一丸となってIT都市としてのダナンを推し進めています。

これからのダナン

ダナンのIT産業は順調に成長してきました。
ただ、今後の課題もあります。


1つ目に、現在のダナンのIT産業はオフショア以外の仕事がまだ多くないことです。そのため、自分たちで一からプロジェクトを企画し作るという力がまだあまり育っていないのです。また、オフショア自体も、小規模の企業からすると、あまり語学が堪能でない技術者も多く、受注元の意図を汲み取るのは至難の業です。オフショアに頼りすぎると、これ以上の成長があまり見込めないのが現状です。

2つ目に、人件費の高騰です。ダナンは経済成長すると共に、近頃は人件費も高騰し始めています。人件費が高騰することで、オフショアによる委託業務も入りにくくなってしまう恐れがあります。こうしたことから、オフショア頼みではなく、企業が自ら作ったものを発信していけるようになり、業務内容が多様化していけばさらにダナンはIT都市として一段上に上がることができるでしょう。

また、ダナン市は法人税が上がり続けているうえ、いつ上がるのかがわからないことも問題です。そのため、急に法人税を請求されることもあるので、特に小規模な企業にとっては大打撃になってしまいます。さらに、FPTのような大企業と、小規模な10人単位の企業では、企業の規模も提供できる仕事の質も差が生じてしまうので、様々な企業が競い合って全体の質を高めていけるかどうかが今後成長し続けるためのポイントとなります。

まとめ

ダナンはまだ課題もありますが、今後もIT分野にさらに力を入れていくと思われます。今後も市や企業が力を合わせて町を盛り立てていくことが、今後の成長への重要な鍵となってくることでしょう。

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