巨大な木々に覆われた神秘の遺跡「タ・プロム」映画の舞台にもなった神秘的な景色とその歴史をご紹介します。

カンボジアにはシェムリアップの北側に位置するクメール王朝時代に建造された数多くの寺院や宮殿の遺跡があり、それらはアンコール遺跡群と呼ばれます。その中で有名なのはアンコール・ワットやアンコール・トムなどがありますが、今回紹介するのはタ・プロム遺跡です。

こちらは、映画「トゥームレイダー」の撮影が行われたことで有名であり、ジブリ映画の「天空の城ラピュタ」のモチーフではないかと言われるほど神秘的な場所です。

今回はそんな神秘的な遺跡の歴史と見どころを紹介したいと思います。

建立から修復されるまでのお話

タ・プロム遺跡を含むアンコール遺跡群が寺院から遺跡になってしまったことには理由があります。

タ・プロム遺跡を建立したのはクメール王朝の皇帝の一人であるジャヤーヴァルマン7世という人物で、アンコール遺跡群に大きく関係した人物とされています。クメール王朝ではヒンドゥー教が主な宗教でしたが、このジャヤーヴァルマン7世は仏教を信仰しました。行った政策にもその信仰心の篤さが反映されており、アンコール遺跡群を建立したことも政策の一つでした。

しかし、ジャヤーヴァルマン7世が多くの寺院を建立したこととジャヤーヴァルマン7世の後継者争いが行われたことが重なって王朝が疲弊しきっていた最中に、当時のモンゴル帝国に侵攻されてしまいます。その後も、アユタヤ王朝が近隣のタイに建国され、クメール王朝とアユタヤ王朝が争いますが、クメール王朝が敗北しクメール王朝は滅亡してしまいました。

その結果、タ・プロム遺跡を含むアンコール遺跡群はクメール王朝から放棄されてしまい、寺院から遺跡となってしまいました。それから時は経ち、1880年代にカンボジアはフランスの統治下に置かれました。その頃にアンコール遺跡群の修復が始まりました。カンボジアの内戦が終わった1990年になって、ようやくアンコール遺跡群はより本格的な修復が行われることとなりました。

現在のタ・プロム遺跡

①タ・プロム遺跡の修復を巡る議論

アンコール遺跡群は1992年にユネスコに世界危機遺産に登録され、2004年に世界文化遺産に登録されました。

タ・プロム遺跡は、今では建てられてから800年以上経っているわけですが、主に樹木の浸食により、損傷が著しいものとなっています。タ・プロム遺跡の修復を担当しているインド政府はこれを見かねて修復計画を発表しましが、そこである議論が現れました。ある議論とは、樹木の浸食により遺跡の損傷が進んでいるのか、もはや今となっては樹木が遺跡の一部になっているのか、という内容のものです。この議論は今もユネスコを中心に行われています。

そういうわけで、他のアンコール遺跡群は修復が進んでいる一方で、タ・プロム遺跡は今でも樹木が侵食しているままになっており、修復は難航しています。

②修復中のタ・プロム遺跡

タ・プロム遺跡の内部には完全に崩壊してしまった部分もある一方で、修復に成功した部分もあります。

例えばタ・プロム遺跡は中央にある仏を祭るための祠堂があり、それを上から見ると四角い形の回廊が囲っている構造となっています。この中心を囲っている回廊は本来崩壊していたのですが、現在は修復されており、歩くこともできます。簡単なことではありませんが、もし、崩壊しても修復を繰り返していけばいつかは本来のタ・プロム遺跡に戻るかもしれませんね。

タ・プロム遺跡の押さえておきたい見どころ!

①遺跡を侵食するガジュマルの大樹

タ・プロム遺跡に侵食している樹木はガジュマルです。

ガジュマルには他の木の上や岩の上に発芽し、それらに巻き付いて成長するため締め殺し植物とも呼ばれています。そんな異名を持つガジュマルが遺跡にダメージを与えてしまっているのは事実ですが、それだけに巨大なので迫力があるのも事実ですね。

②二つの宗教にまつわる彫刻

タ・プロム遺跡には仏教、ヒンドゥー教の二つの宗教観が反映されていますが、これには理由があります。

アンコール遺跡群を建立したジャヤーヴァルマン7世の在位中は仏教が主な宗教でしたが、ジャヤーヴァルマン7世がなくなった後はそれまで主流だったヒンドゥー教の勢いがまた強まりました。アンコール遺跡群にもそういった影響が反映されたようで、タ・プロム遺跡には仏教とヒンドゥー教の彫刻が存在します。

ヒンドゥー教が勢力を取り戻した際にタ・プロム遺跡にあった仏像などは破壊されてしまいあまり残っていませんが、遺跡の西門にはバイヨン寺院などにも見られる四面仏尊顔があります。一方でヒンドゥー教にまつわる彫刻はたくさんあり、ヒンドゥー教の女神であるデヴァターや、ヒンドゥー神話にまつわる神々のレリーフが壁面に彫られており、こちらは比較的綺麗なまま残っています。

③反響する聖なる祠堂

遺跡内中央からみて北東側には音が反響する塔があり、そこで胸を叩くと悪いものを払うことができると言われています。上部が空いた形ところから、光が差し込むようになっており、壁面に無数の穴が開いているのですが、本来ここには宝石などがはめられていたようです。もし、未だに宝石などがはまっていたら今よりいっそう美しい空間だったのでしょう。

まとめ

タ・プロム遺跡はいわば、一見同じ形を保ってはいますが、実は樹木の成長によりいつ見ても同じタ・プロム遺跡ということはあり得ず、一期一会な遺跡という見方もできますね。

なので、その一期一会な神秘的な遺跡をこの目で見てみたい!という方は早めにカンボジアのシェムリアップに訪れてみてはいかがでしょう?

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