2019年ベトナム人実習生の問題を考える。根本的な問題は何なのか?どうすれば解決出来るか?日本人とベトナム人が共存共栄するために…私達なりに考えてみました。

皆さんは外国人技能実習制度という制度をご存知でしょうか?この制度は日本の企業が主に人手不足を解消するために在留資格を持つ外国人を技能実習生として雇用します。それによって企業の人手不足を補い、雇われた外国人は給料をもらいながら技能や専門知識を学ぶことができるという制度です。

しかしながら、現実には様々な問題が生じており、一概にはうまく機能しているとは言いがたいでしょう。また、それを解決するためにはどうしたらいいのでしょうか?

外国人技能実習制度の概要

その前にまずは外国人技能実習制度に関する概要に目を向けましょう。

①外国人技能実習制度の成立の背景

1960年代後半に海外進出した日本の企業が現地法人を仲介に外国人に企業での労働を呼びかけ、技術と専門知識を学習したこの外国人が帰国し母国の発展に寄与したという事実がこの制度の始まりです。

②技能実習制度の監督を行うJITCO

この制度を本格的なものにするために1981年に技能実習生となる外国人に在留資格を与えたり法整備などもされました。この制度を推進するJITCO(財団法人国際研修協力機構)はこの制度を利用している企業や外国人を日本に送る諸外国の機関などの監督や支援を行っています。同時にJITCOは技能実習生に悩みや相談などにのったり、労働にまつわる法的権利を保障しています。

③二通りの受け入れ方式

外国人実習生を受け入れる方式には二通りあり、企業単独型団体管理型があります。企業単独型は日本の企業が直接現地法人や取引している海外の企業の常勤職員を受け入れる方式で、団体管理型は商工会などが受け入れ元となりその傘下の中小企業などで実習を行うといった形です。

④最大五年間の滞在が許可される

最大で五年の滞在が許可されます。一年目に基本的な知識を学び、一定の技能水準が認められた場合第二号技能実習の在留資格を取得することができ、最大三年の在留が許可されます。そして、第二号技能実習実習先の企業などが優良だった場合、最大五年間の在留が許可され、それまでに得た技能などを高めることが出来ます。

技能実習生で来日するベトナム人が抱える問題

1993年(平成5年)から導入された当制度ですが、発展途上国の人材育成に寄与している反面、様々な問題があることも事実です。特に近年は、ベトナム人の数はかなりのもので全体の38.6パーセントを占めており、来日数はトップクラスになりつつあります。

ベトナムの月収は日本円に換算すると数万円程度で実習生は最低賃金で労働することが多いのですが、最低賃金でもベトナムの人々にとっては魅力的に映るようです。しかしながら、実際の労働環境は劣悪で給与も払われるはずの金額より少なかったり、様々なハラスメントなども横行してしまったりという事実もあります。

外国人の犯罪率は増える一方で、これは劣悪な実習先の環境から逃れたベトナム人が犯罪を行ってしまうという背景があります。ほかにも失踪してしまいその後の足取りがつかめないなどのケースもあります。これでは日本側、ベトナム側、双方に損失が出てしまっていることになってしまっていますが、なぜこのような事態に発展してしまうのでしょうか?

①急増する失踪者

JITCOによれば、2012年の失踪者の総数は1532人でベトナム人の失踪者数は371人でした。2015年の実習生の失踪者数は3110人に増加し、その中の1015人がベトナム人という報告があります。このことからわかるように失踪者数は急増しつつあります。この問題には、実習生を受け入れる企業の多くが外国人を低賃金で過酷な労働に従事させていることに原因があり、実習生が失踪するケースが多くみられます。

②失踪する原因

そんな過酷な労働環境から逃れたい実習生は犯罪に加担してしまう場合もあり、本人には犯罪を行う意思がないにしても引き抜きを行うブローカーによって犯罪の片棒を担がされることもあります。技能実習制度は技術を学び帰国した後にその技術を国の発展に役立てるという名目で機能している制度ですが、実際のところはベトナム人にとっては出稼ぎをするための制度とみなされている場合も多くあります。

そのため、ベトナムで労働するより日本に行って労働した方がよい賃金が得られると期待し、日本にやってこられる人が年々増加しつつあるのです。しかしながら、失踪したケースの原因を考察すると、現実には提示された賃金よりはるかに安い賃金で劣悪な環境で長時間労働に従事しなければならないことになってしまうことこそが、ベトナム人が失踪する本質です。

技能実習制度が抱える問題の解決案

では、こういった問題を解決するにはどうしたらいいのでしょうか?

①提示した額の賃金をちゃんと払う

ベトナム人は実際の所、稼ぐために日本に来ています。なので、提示されたはずの賃金を得られないということは深刻なことです。失踪を防ぐためにも管理機構(JITCO)は労働法を遵守しなかった企業に厳しい罰則を行うべきではないでしょうか。

②信頼関係を築く

企業側に問題があるのは事実ですが、ベトナム人には問題がないわけではないことも事実です。低賃義で劣悪な環境で労働を強制されるという事実がある一方で、ベトナム人の認識が誤っている場合があるからです。

例えば建築業では雨の日は労働ができません。その結果、当初想定された額よりも少ない額を払わざるを得ません。しかしながら、そのことを理解できていないと、自分は不当に扱われたのだと思ってしまいます。

来日する際に技能実習生はある程度の日本語能力を身につけておくことになっていますので、原則日本語で対応できます。しかし、ベトナム人の日本語が必ずしも流暢に話せたりあいまいな表現が理解できたりするわけではありません。そういった点に配慮なくおこなった場合に不和が生じると考えます。それを防ぐためにも信頼関係を築くのが大事ではないでしょうか。

策としては定期的なヒアリングや面談を行うなど、認識をすり合わせ、お互い安心できる環境を整えておくことが大切ではないでしょうか。信頼関係を築くためには言語、コミュニケーションにおいて歩み寄る必要があるのです。

まとめ


現在の技能実習制度は本来の理念からほど遠いものになっているようで、現代の奴隷制ではないかと危惧するかたもいらっしゃるようです。来日するベトナム人の中には日本に憧れて来日する人もいるようですが、日本に嫌気がさして帰国するケースもあるようです。これでは日本人である私たちも悲しいですね。

そうならないためにも制度整備の早急な履行をすべきでしょう。低賃金で雇われた外国人だからどんなふうに扱ってもいいということはないはずです。日本人の外国人に対する姿勢が今後必ず到来する日本のグローバル社会のあり方につながっていくのではないでしょうか?
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