アンコール遺跡群でも珍しい「水中遺跡クバールスピアン」水量の影響でごくわずかな期間しか見ることができない神秘を解説します。

〈珍しい水中遺跡「クバールスピアン」〉

シェムリアップの中心から車で約一時間走ると、聖なる山プノンクーレン山脈に位置する場所に、「クバールスピアン」という遺跡があります。山の中にあるため、入山ゲートから30分ほどのハイキングを楽しめるのも魅力の一つです。一部、坂の勾配の厳しい場所や、道が細く獣道のような場所もありますが、撤去しきれていない地雷が埋まっている危険があるので、コースをそれずに進む必要があります。美しい蝶や野鳥のいる自然の風景を楽しみながら、山頂部の遺跡エリアに到着すると小川が流れており、その周辺の岩や川底にはアンコール朝時代に彫られた彫刻を見ることができます。

クバールスピアンは11世紀中頃、ウダヤディティヤバルマン2世によって彫られました。クバルは「川」、スピアンは「底」という意味で、合わせて「川の源流」という意味があります。シェムリアップ川の源流200mの範囲にある彫刻の遺跡で、この神聖な空間を流れていく水は聖水となって、シェムリアップ全土を潤すように流れていくと伝えられています。

〈神秘的な1000年前の彫刻〉

クバールスピアンの彫刻や碑文は、インド神話をモチーフとして作られています。1000年も風雨や水の流れにさらされていたとは思えないほど、しっかりと形をとどめている彫刻もあれば、欠落した部分が修復されて再現されているものもあります。インド神話を予習していくと、彫刻をより深く楽しむことが出来そうですね。アンコールワットにはたくさんの魅力的な遺跡がありますが、それらが「乾いた」印象であるのに対して、クバールスピアンの彫刻は「みずみずしさ」にあふれているので、とても新鮮な気分で鑑賞できます。

また、当時信仰されていた宗教はヒンドゥー教でした。そのため彫刻のモチーフの多くはヒンドゥー教の神々となり、創造の神ブラフマー、維持の神ヴィシュヌ、破壊の神シヴァなどの彫刻のほか、神話の中で登場するカエルの像、ガネーシャの彫刻なども発見することができます。彫刻の中で特徴的なのは、「1000本リンガ」と呼ばれるものです。リンガとはヒンドゥー教の神シヴァをあらわす男性器の象徴です。ほかに女性の本源「ヨニ」をあらわす彫刻もあります。川底のリンガが多いほど、その上を流れた水はより聖なる力がみなぎるとされています。水の流れの底に見える遺跡はとても神秘的です。

〈クバールスピアンを一番楽しめるシーズンとは?〉

クバールスピアンを楽しむためには、季節選びがとても重要になってきます。川の水量が多い雨季に来ると、せっかくの彫刻が見えなくなってしまいますし、乾季に来ると、水がからからで普通の印象の彫刻になってしまいます。カンボジアの乾季は11月上旬から5月中旬、雨季は5月下旬から10月下旬です。クバールスピアンの観光のベストシーズンは11月~2月くらいだそうです。滝なども季節によっては全てなくなってしまったり、大迫力になったりと、タイミングによって大きくその姿を変えるそうです。ちなみに遺跡にはある程度水があったほうが遺跡のみずみずしさが楽しめますが、乾季の水が干上がっているときにしか見られない彫刻もあるんだそうです。

〈自然散策も楽しんで一挙両得!〉

遺跡は川の源流部分にあるため、そこまでは2km近く、車を降りてから30分ほどの行程を歩かなければなりません。岩や木の根が張り出した道を歩くちょっとしたトレッキングです。また正規ルート以外には地雷の危険もあるそうなので、ガイドさんと同行することをおすすめします。ガイドさんは遺跡だけでなく自然にも詳しいので、トカゲをつかまえてくれたり、植物の説明をしてくれたりして、遺跡への行き帰りも充実した時間を過ごすことができますよ。

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〈クバールスピアンの基本情報〉

アクセス:シェムリアップから車で1時間30分
駐車場:有(無料)
入場料:大人1日券37USドル、3日券62USドル、7日券72USドル(アンコール遺跡の共通チケット)子供:12歳未満は入場無料。ソカシェムリアップホテル近くにある遺跡入場券売り場にて、アンコール入場券の事前購入をお忘れなく!
入場時間:6~15時
定休日:なし

〈最後に〉

クバールスピアンは山道となるため、入場は14時までに制限されているため時間にはお気をつけください。是非、ベストシーズンを狙ってクバールスピアン遺跡のみずみずしさと神秘をぜひ味わいに来てくださいね。
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