東南アジア屈指の秘境「サパ」インドシナ山脈に住まうベトナム山岳民族の世界。その歴史と魅力を解説します。

ベトナムの山脈に人々があまり立ち入らない秘境が存在します。ここでは少数民族がひっそりと暮らし、美しい棚田を守っています。今回はベトナムの知られざる秘境「サパ」をご紹介します。

山岳の町「サパ」とは

サパとは、ベトナムと中国国境の山脈にある町です。標高1600mに位置するサパは複数の小さな村が集まってできています。サパの村ではベトナムの少数民族がそれぞれの集落を持って生活しており、彼らは棚田での稲作や出稼ぎ、土産物を売るなどして生計を立てています。

観光客はサパで主に少数民族と交流したり、美しい棚田を眺めたり、市場で土産物を物色して楽しんでいます。サパは山奥で外から人が立ち入ることが少ない為、今でもベトナムの昔ながらの生活が垣間見える貴重な町です。

サパの歴史

標高3000m級のファンシーパン山の陰になっていたサパは長らくその存在を知られていませんでした。ベトナムがフランスに統治されるようになったころ、サパはベトナムとして認識されるようになりました。

フランスの統治下でサパは避暑地として開発され始め、外国人が別荘を立てるようになりました。ただ、この時に別荘が建てられたのはサパのほんの一部で、それ以外は少数民族の集落として残りました。

それぞれの少数民族の歴史は書物として残っているのではなく、語り継がれて伝えられています。そんな謎めいた所も人々を引きつけてやまない理由なのかもしれません。

衣装が異なる複数の民族

サパの村には複数の異なる少数民族が暮らしています。「黒モン族」、「赤ザオ族」、「ザイ族」、「花モン族」など、民族はそれぞれ衣装に違いが見られます。

黒モン族

カットカット村やラオチャイ村、マーチャ村などに住んでいる黒モン族は、黒々とした濃い藍染めの服を身に纏っています。サパに住むモン族の中でも黒モン族は約53%と最も多く、到る所でその姿を見かけることでしょう。

赤ザオ族

ターバン村などに住む赤ザオ族の服は黒モン族によく似ています。赤ザオ族と黒モン族の大きな違いは、頭に被っている布が赤いことです。

頭の布は通常7、8枚の布を重ねてあるのですが、近頃は重ねず1枚だけ被っている人もいます。重ねた布の場合、赤い座布団を乗せているかのようでどことなく「さるぼぼ」を彷彿とさせるキュートな民族衣装です。

ザイ族

タバン村などで見かける中国をルーツに持つ民族がザイ族です。蛍光色などの地に襟首から右脇にかけて別の鮮やかな色のラインが入った服を着ています。

頭のカラフルなスカーフも特徴的です。ザイ族の集落ではライスワインが特産で、度数約40%の強いお酒です。勧められた際はご注意下さい。

花モン族

バックハーマーケットに集まっているのは花モン族です。モン族は赤、黒、白、青(緑)、花の5つに分かれていますが、その中でも花モン族は最もカラフルで豪華な民族衣装を着ています。

襟元から右脇にかけて刺繍が施されており、色鮮やかな装いはまるで花束のようです。サパにはこの他にも実に多様な民族が暮らしています。それぞれに素朴で可愛らしい人々との交流を楽しみましょう。

郷愁を誘う雄大な棚田

サパを訪れる際にぜひ見学したいのが、見事な棚田(ライステラス)です。山間に現れた波打ち際のような模様が階段状に下へ下へと続いている光景は圧巻であるとともに、日本も失いつつある古き良き人々の営みや情景を思い出させてくれます。

棚田で働く人々ものどかで、彼らの暮らしぶりを眺めていると時間の流れを忘れられます。どこか懐かしささえ感じるサパの棚田は5、6月ごろが見頃です。また、新緑の棚田も美しいですが、黄金色の棚田を見るなら9、10月がベストシーズンです。

お土産も忘れずに

サパでは集落の到る所で少数民族の民芸品が売られています。サパの民芸品は布製品が多く、鞄や敷物など様々な商品が並んでいます。

特に人気が高いのは、モン族の作るポーチや財布などの雑貨です。これらの民芸品は日本でも人気のアジアン雑貨として取引されています。

また、モン族の民芸品を本格的に見て回るなら、サパから車で3時間のバックハーで毎週日曜に開催されるバックハーマーケットもおすすめです。集まった花モン族の色とりどりの衣装も必見です。

入村時の注意点

標高が高いので、羽織るものは必須です。また、サパの人々は素朴で親切ですが、よく民芸品を売り込みに来る人が集まってきます。

その際、必要も無いのに買ってしまうと、「この人は買ってくれる」と際限なく人が売り込みに来てしまうのでご注意下さい。

サパへのアクセス

サパは主にハノイからバスや鉄道で向かうことになります。直行バスであれば約5時間半で到着です。

鉄道を経由して、路線バスなどで向かう方法もあり、こちらは10時間近くかかってしまいますが、旅の雰囲気を味わうにはもってこいです。

詳しくはこちらをチェック
ハノイからサパへの行き方まとめ!アクセス・移動時間・料金を徹底解説!【列車・バス】

まとめ

サパはアクセスこそし辛く、民芸品の売込みが激しいですが、穏やかで優しい民族や雄大な棚田、過ごしやすい気候に恵まれたベトナム屈指の秘境です。この風景が後世まで続くことを願うばかりです。

[jvs_footer]