カイディン廟 - フエと周辺の観光スポット

世界遺産【フエのカイディエン帝廟】の基礎知識。観光前に絶対に読んでおきたい歴史をご紹介します。

カイディエン帝廟

ベトナムの古都フエはご存知ですか? ベトナム中部の人気観光都市ダナン・ホイアンの近くにあるフエは、ベトナム最後の王朝グエン朝があった古都です。ベトナム初の世界遺産にも登録されており、ベトナムの京都とも呼ばれています。 19世紀から20世紀にかけてベトナムにあった阮朝の首都に定められていたフエには、いくつもの美しい帝廟があります。その中で、今回は、最も「嫌われている」皇帝の帝廟・ガイディン帝廟をご紹介します!

歴代最も嫌われている皇帝「カイディン」

カイディンは、1802年~1945年まで長く栄華を誇ったグエン朝の12代皇帝です。フランス統治下という時代背景も影響し、賢君として人気のあるミンマン帝とは対象的にフランス文化に魅了されました。当時の皇帝はフランス文化に魅了された人も多く、カイディンだけがフランス文化に魅了されたわけではありません。ミンマンの父ザーロン帝もフランスの芸術文化に魅了された皇帝の一人でした。

カイディエン帝廟

ではなぜ、カイディンが国民から嫌われてしまったかというと……帝廟建設のために税金を20%も引き上げたから。  現在はどこにもない珍しい建築として世界遺産にも登録されているカイディン帝廟は、20%も税金を上げられた当時の国民の怒りや悲しみがあった上で建てられました。  そう聞くと見たくなくなってしまうものではありますが、自分勝手で暴君ともいわれるカイディンが残したカイディン帝廟は、彼の性格を反映してか「どこにもない」新しい帝廟です。当時の国民のみなさんの気持ちを考えるとなんとも言えませんが、見る価値はあります。  中国的要素の多い歴代帝廟とは全くことなる、カイディン帝廟の見どころに迫っていきましょう!

カイディン帝廟の見どころ:①「フランス文化が強い」

カイディン帝廟は、1920年~カイディンの死後6年が経過した1931年まで11年をかけて建設されました。  カイディン帝廟が他と違うのは、なんといっても中国風ではないところです。先ほど記事で述べました賢君ミンマン帝の帝廟は中国様式であり、他の多くの帝廟も中国様式のなかで、カイディンは中国ではない国から大きな影響を受けました。それはどこか……フランスです。

カイディエン帝廟

フランスと中国両方の影響を受けたカイディン帝廟は、帝廟のなかで飛び抜けて奇抜でユニークなバロック様式。フランスから輸入した高価な鉄筋コンクリート製の帝廟は、ヨーロッパ的でありアジア的であり……見る人の首をかしげさせ、目を虜にさせます。 当時のベトナムフエはフランス統治下でした。宗主国のフランスに擁立されたという背景も手伝い、カイディン帝はフランスに対して融和的な態度でした。特に、1922年に開催されたマルセイユ殖民博覧会に出席してからはさらにフランス寄りの強くなっていきます。上記の経緯があり、カイディン帝は自分の帝廟をバロック様式で建設するよう命じたのです。

カイディエン帝廟

カイディン帝廟の見どころ:②「中国風の石像」

中国風ではなく異例のフランス風といったのに中国風の石像?そうなんです、ここがカイディン帝廟の面白いところ。バロック様式でわざわざフランスから取り寄せた高価な鉄筋コンクリートで建てられたカイディン帝廟は、100%フランス様式、というわけではないのです。

カイディエン帝廟

カイディン帝廟にはいたるところに中国風の馬や中国の役人の石像があります。中国で高貴な伝説の動物・神の使いとされている龍をモチーフにした絵や像もあります。皇帝の功績が書かれた碑石が置かれている碑亭にある龍の瞳には、なんと、フランス産ワインの瓶が埋め込まれています。フランスと中国、中国とフランス、そしてフエ独自文化をミックスさせて建てられているからこそ、カイディン帝廟は歴代最も奇抜でユニークな帝廟と呼ばれているのではないでしょうか。 なんとも奇妙なのに、一緒にある姿をみると違和感を通り越して親和性を感じてしまう美しさと魅力があります。

カイディン帝廟の見どころ:③「啓成殿」

奇抜でユニークなカイディン帝廟ですが、歴代の皇帝の帝廟に比べると規模としては小さい方です。広大な敷地を誇るミンマン帝廟とは比べ物にならない小ささです。  しかし、入り口から120段の階段をのぼったところにある啓成殿に足を踏み入れれば、それも気にならなくなります。啓成殿は、アジア各地から集められた瓶や陶器で飾られているのです。壁面は四季をイメージして飾られていて、壁面のモザイクをよくよく見ると日本の瓶も見ることができます。

カイディエン帝廟

そうです。アジア各地から集められた瓶や陶器で飾られているというのは、立派で整った瓶や陶器が所狭しと並んでいるだけではありません。砕いた瓶や陶器を使って新しい芸術が生み出されているのです。近代美術のようなアートは、当時の帝廟に対する価値観に真正面から背を向けています。SAKURAと書かれた日本の瓶も、ぜひぜひ探してくださいね!  壁面のモザイクを楽しみながら奥に進むと、一番の見所であるカイディン帝像が鎮座する奥の部屋があります。躍動的な龍の絵・豪華絢爛な天蓋が天井を彩り・壁面は色とりどりのガラスと陶器の破片で埋め尽くされている様は圧巻。装飾は龍や鳥をはじめとした動植物で見ればみるほど発見があります。

おわりに

自分の帝廟を造るために税金を20%もあげたカイディン帝は当時の国民からすると暴君に違いありませんが、そのこだわりは細部にまで輝いています。  カイディン帝廟がここまで奇抜な帝廟になったのは、カイディン帝が派手好き・新しいもの好きだったことに加えて無宗教だったことが挙げられます。無宗教だったために、東西南北様々な文化を取り入れた帝廟を生み出すことができたのです。  嫌われた帝カイディンの帝廟は、現在帝廟のなかで最も高い人気があります。搾り取られた税金で建てられた、ここ以外どこにもない唯一の帝廟。皮肉ではありますが、後世を生きる私達は同時のフランスとの関係を感じるためにも見る意味があります!  奇抜でユニークな「人と違う」ことにこだわったカイディン帝の性格がうかがえるカイディン帝廟を、見に行きましょう!

カイディエン帝廟

アクセス

住所:Khải Định, Thủy Bằng, Hương Thủy, Thừa Thiên Huế 530000
営業時間:07:00~17:30

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