バンテアイ・サムレ遺跡とは
About Banteay Samre Remains
バンテアイ・サムレとは「サムレ(ソムラエ)族の砦」という意味です。サムレ族とはかつてこの地に住んでいた古代民族で勇猛だったことが知られています。
建築したのはアンコール・ワットを造営したスーリヤヴァルマン2世です。
アンコール・ワット造営直後に建てられており、中央祠堂や連子(れんじ)窓、尖塔の形、十字型テラスなどにアンコール・ワットの建築様式が受け継がれています。
小アンコール・ワットと呼ばれる観光スポットです。
大勢の観光客で賑わうアンコール・ワットと違い、こちらは訪れる人が少ないので遺跡見物をゆっくりと楽しみたい方におすすめ。
アンコール・ワットと似た作りの寺院とは言え、名前が示すとおり軍事要塞的な外観をしています。
外側に窓を配置しない回廊や6mもの高さの周壁は訪問者を威圧することでしょう。
閉鎖的だが、内部は解放的で典型的な砦型寺院の構成となっています。
同時期に建造されたチャウ・サイ・テヴォーダやトマノンとの共通点を探すのも良いでしょう。
バンテアイ・サムレ遺跡の歴史と見所
アンコール・ワットを造営したスーリヤヴァルマン2世が12世紀中ごろに建立しました。
アンコール・ワットの造営後になります。
外観は要塞のようないかつい感じですが、一つ一つのディテールはアンコール・ワットの建築様式を引き継いでいる点に注目です。
参道の途中にある十字テラスにはシンハ(ライオン)像とナーガ(蛇神)像が配置されています。
アンコール・ワットのテラスと同じですね。環濠があり、6mもの高い周壁があるので堅固な要塞のように見えます。
バンテアイ・サムレの見所は破風にある見事なレリーフです。
精密で緻密な彫刻はアンコール遺跡の中でも1、2位を争います。
破風は門や入口の上に装飾されていますので、目線を上に向けて楽しんでください。いくつかの有名な破風をご紹介します。
《山を持ち上げるクリシュナ神》
東塔門を抜けたところにあるレリーフ。インドラ神の起こした天災から村人を守るために山を持ち上げたクリシュナ物語をモチーフにしたものです。豪風雨から民を守る願いがこめられています。
《阿修羅のお尻にかみつく猿》
アンコール・ワットの第一回廊、壮大なレリーフにあったラーマーヤナの一場面です。ラーマ王子率いる猿軍団と魔王ラーヴァナ率いる阿修羅軍との戦闘シーンがモチーフになっています。第二回廊中庭の経蔵の壁面で見られます。経蔵にも目を凝らしましょう。
《ブラフマー神誕生の瞬間》
「阿修羅のお尻にかみつく猿」と同じ経蔵の壁にあるレリーフです。
大蛇の上で眠るヴィシュヌ神の臍(へそ)から蓮の花が生えてブラフマー神が誕生しました。その様子が再現されています。
《アプサラスのレリーフ》
第二回廊、北テラスにあるレリーフ。楽団の奏でる音楽で楽し気に舞い踊るアプサラス(天女)の様子が描かれています。
《太陽の神と月の神》
西塔門と西門のレリーフはつながっています。西塔門に描かれるのは、乳海攪拌で霊薬アムリタを悪の権化であるカーラ(死者の王)が飲んでしまったということを、ヴィシュヌ神に伝える太陽の神と月の神です。
《ヴィシュヌ神とカーラの戦い》
西門にあるレリーフでは、太陽の神と月の神から報告を受けたヴィシュヌ神がカーラを討伐するようすが描かれています。
このようにストーリー性のあるものが多いので、想像力がかきたてられますね。
どのレリーフも彫りが深く繊細です。
東塔門と中央祠堂の間の拝殿には方形の石の台があります。ここは死者の灰を流すのに用いた場所です。
灰を流した排水口にはカーラの彫刻が施されています。
アンコール・ワットにもたくさんあった連子窓がバンテアイ・サムレでも見ることができます。
回廊に配置された連子窓は風情があり、数も多いです。
この寺院で暮らしていた当時の人々の落ち着いた暮らしが想像できますね。
バンテアイ・サムレの王と歴史
西暦 | 王名 | 遺跡名 |
---|---|---|
1113年 〜 1150年 |
スーリヤヴァルマン2世 Suryavarman II, |
主な建築物:アンコール・ワット、バンテアイ・サムレなど |
バンテアイ・サムレ遺跡の見学ワンポイントアドバイス
何と言っても繊細で立体感のある破風のレリーフから目が離せません。 撮影にも向いています。 上方向の目線で遺跡を眺めると絶景ポイントを見つけることができるでしょう。
フォトジェニックポイントも多くあります
繊細な彫刻が魅力的な遺跡
《「甘いキュウリの王」伝説》
バンテアイ・スレイにはサムレ族にまつわる伝説が残っています。
昔、サムレ族のバウという農民がキュウリを作っていました。バウの作るキュウリは甘くて美味しいので王様が気に入り、自分だけに持ってくるように命じました。
そして、畑に侵入する泥棒も殺すようにと言ったのです。
雨季に入り、キュウリがとれなくなると王様に献上するキュウリの数が減ります。
我慢できなくなった王様は自分がバウの畑に侵入してしまい、殺されてしまいます。
王様には後継者がいなかったので、神象と言われる白象に後継者を選ばせることになりました。白象はバウを王に選びます。バウは王となり、前王をプレ・ループに埋葬しバンテアイ・サムレを造りました。
前王に仕えていた高官達はバウを妬み意地悪をしたので、耐えかねたバウは王宮を飛び出し、バンテアイ・サムレにこもったのだとか・・・。
バンテアイ・サムレの要塞のような外観は外部に向けたのではなく、王位継承からなる内乱に備えたものだったのかも知れませんね。
バンテアイ・サムレ遺跡の見学の注意点
郊外にありますので観光する場合は、所要時間などを先に計画を立てましょう
時間効率に気をつけたいものです。
見学コースに組み合わせるのは「バンテアイ・スレイ」や「プレ・ループ」が良いでしょう。
またアンコール・ワットや他遺跡にも数多く配置されているデヴァター(女神)像の姿を見かけません。
デヴァター像を撮影したいという方は他の遺跡を選んだ方が良いでしょう。
懐中電灯があると良いでしょう
回廊内部は昼でも暗い場所があります。懐中電灯を携帯しておけば、遺跡見学がより楽しめますね。
寺院遺跡では僧侶の方への配慮
寺院遺跡では僧侶の方を見かけることがあります。宗教上の理由で女性が僧侶の体に触れたり、物を渡したりする行為は禁止事項です。
迂闊に握手を求めたり、お賽銭をあげたりしないようにしましょう。
バンテアイ・サムレ遺跡の場所(Google MAP)
シェムリアップから北東方面に20kmほどいったところに位置します。
シェムリアップ・オールドマーケットからは車で45分ほど。
バイヨン寺院からだと、車で20分ほどです。