タ・ケウ遺跡とは
About Ta Kev Remains
タ・ケウとは「クリスタルの古老」という意味です。クリスタルと言えば水晶というゴージャスなイメージがありますが、結晶という意味もあります。その名のとおり、結晶のように積み上がった石材が要塞のようです。
ジャヤヴァルマン5世によって10世紀後期から11世紀入ってすぐの頃に造営がはじまりました。アンコール・ワット建立に対する新しい建築方法の模索や、建築リハーサルを試していたとされています。
アンコール・ワットは12世紀に造られていますので、1世紀も前から建立計画が練られていたというわけです。他の遺跡とは建築様式が異なり、中央伽藍(ちゅうおうがらん)を囲む回廊の外側に偽窓があります。そのため、要塞のような外観となりました。
タ・ケウは完成にいたっていない、未完の遺跡です。建築が中断された理由は王が突然死したからだという説と、中央祠堂に落雷があったからだという説があります。
四方に副祠堂を配置し、その中心に中央祠堂。これら5つの塔はすべて同じ高さで構成されている平面ピラミッド式寺院です。新しい造営方法への試みや、この時代の建築方法を知ることのできる貴重な遺跡です。
タ・ケウ遺跡の歴史と見所
10世紀後期から11世紀入ってすぐにジャヤヴァルマン5世によって作られました。
アンコール・ワットにつながる建築様式が模索されています。
寺院は未完のまま残されており、当時の石積建築技法を知ることができる貴重な遺跡として知られようになりました。
王位継承を巡る争いが内戦へとつながったアンコール王朝。その王権の象徴が建造寺院です。
タ・ケウもジャヤヴァルマン5世の王権の象徴として建立されました。
その建築中に落雷があり、中央祠堂の尖塔部分が欠損してしまったのです。
ジャヤヴァルマン5世はその後まもなく死去。次世代の王、ウダヤーディチャヴァルマン1世は建築途中の寺院をどうするか、儀礼で占いました。
その結果、タ・ケウは神の怒りに触れているとされ、建築を中断したまま放棄されたのです。
東西約117m、南北約110mの広さの敷地は5層のピラミッド式に構成されており、最上部には5つの祠堂が同じ高さに並びます。
中央伽藍を取り巻く回廊は外から見える部分に偽窓を並べ、要塞のような雰囲気を演出。本当の窓は回廊内部に作られています。
アンコール遺跡群の他遺跡に見られる豪華な壁面装飾がタ・ケウにはありません。建築途中で放置されたためで、石積みで建物を作ってから壁面彫刻がなされていた当時の建築手法が理解できます。
5つの祠堂に神像はなく、中央祠堂に祀られるはずだったものが不明なままです。タ・ケウという名前がもつ「クリスタルの古老」は結晶のような外観だけでなく、アンコール・ワット建立に向けて最新の技術を結集したという意味合いも含むのでしょう。
タ・ケウ遺跡の歴史
西暦 | 王名 | 遺跡名 |
---|---|---|
968年 〜 1,001年 |
ジャヤヴァルマン5世 |
建築寺院:タ・ケウ |
タ・ケウ遺跡の見学ワンポイントアドバイス
数々の遺跡を残しているラージェンドラヴァルマン王の補佐官にいたのがヤジュニャヴラーハです、高い美意識と優れた見識を持つ建築家でもあったヤジュニャヴラーハがラージェンドラヴァルマン王の建造物に関わっていたことが分かっています。
ジャヤヴァルマン5世は即位後にヤジュニャヴラーハを自分の王師として迎えます。
タ・ケウもヤジュニャヴラーハが関わっているのでしょうか?
ヤジュニャヴラーハが亡くなったのはバンデアイ・スレイ建築後の990年。
タ・ケウ建築計画に加わったかも知れませんが、建設に入ってからは関わっていないと思われます。
タ・ケウはジャヤヴァルマン5世が自らの技量を試す意味合いで作られたのでしょうね。
石積みされている石は硬度の高い緑砂岩が使われています。
壁面装飾は難しく、壁面装飾をしない予定だったのかも知れません。
装飾がない寺院、周囲に残る切り出されたままの石、ゴツゴツした見た目、他の遺跡とは異なる外観は一見の価値があります。
かなり急勾配な階段ですが、頂上から見る景色は幻想的です。
周囲の色濃いジャングルが眼前に迫り、時代の流れを感じるとともに迫力の眺めに感動することでしょう。
保存状態が良い回廊
切り立った急勾配の順路
美しくに整った壁
タ・ケウはアンコール・ワット国際ハーフマラソンのコースに含まれます。
マラソンで走るも良し。その後で実際に見学して、当時の建築技術を勉強するも良し。
東楼門から入場すると、ナンディン(聖牛)像があります。ナンディン像はシヴァ神が乗る聖なる牛。
中央祠堂に祀られるはずだったのはシヴァ神だったのかも知れません。
伽藍の周囲を回廊で囲むという建築手法を初めて用いた建築物と言われています。
アンコール・ワットなどの他遺跡で必ずある回廊。その最初の様式に注目です。
外側は偽窓で訪問者に威圧感を与えますが、内側は本物の窓を配し解放感あふれる作りとなっています。
タ・ケウのある通り沿いには食堂や土産物屋があります。食事したり、お土産を探したり、一息入れるのに最適です。
タ・ケウ遺跡の見学の注意点
歩きやすい服装、動きやすい靴を着用!
頂上に行くには急な階段を上らなければなりません。転落事故の報告もありますので、注意が必要です。階段を上る際は両手をついて登れるように、両手をあけておきましょう。本来、中央祠堂に祀られているものは不明のままです。現在、安置されている仏像は後世になって持ち込まれました。
タ・ケウ遺跡の場所(Google MAP)
アンコール・ワットの北東3km、アンコール・トムからは東に1kmいったところに位置します。バイヨン寺院からは車で5分ほどの距離。周囲にタ・プロームとバンテアイ・クデイがありますので、一緒に観るコースがおすすめです。
シェムリアップ国際空港からは車で10分から20分ほど。見学時間は45分目安です。