クバール・スピアン遺跡とは
About Kbal Spean Remains
シェムリアップ川を源流とするストゥン・クバール・スピアン川の水中や川岸に、数々の神様や聖なる動物の彫刻を見ることができる水中遺跡です。マイナスイオンたっぷりの森林を30~40分トレッキングすると、その神聖な場所が出現します。
約200mにわたり川床に彫られたヒンドゥー教の神々やインド神話のモチーフは神秘的で、この場所が聖なる場所であることを意味しています。
その神聖なシンボルの上を流れる川の水は清められ、その聖水はシェムリアップ全土に行き渡りトンレサップ湖まで流れ込む、と古来より伝えられている場所です。
美しい緑と渓流の遺跡は一見の価値がありますが、乾季は川の水が干上がり川底が露出してしまうので遺跡の風情が半減し、雨季には続く雨の増水で水中の彫刻が見えない場合もあるため、12~2月、7~8月頃がベストシーズンと言えるでしょう。
クバール・スピアンの歴史と見所
1969年にフランスの民族学者により発見されたクバール・スピアンでは、現存する彫刻は11世紀の王、スーリヤヴァルマン1世(1002~1050年在位)と、その甥の息子にあたるウダヤーディチャヴァルマン2世(1050~79年在位)の時代に作られたものと言われています。
それはアンコール・ワットが建設される少し前の時代です。
現在のカンボジアの元となったクメール王朝は、802年頃ジャヤーヴァルマン2世がプノン・クーレン山で即位したことに始まります。
それから約200年後の王となるスーリヤヴァルマン1世は、隣国のシャムや中国と同盟を組み大乗仏教を厚く信仰した王で、没後は「涅槃王」と呼ばれました。
この王こそがアンコール・トムの建造に着手し人物で、クバール・スピアンの見どころの1つ「1000本リンガ」を作らせました。
大乗仏教のルーツは、当時バラモン教による厳しいカースト制度に疑問を抱いた仏陀が悟りを開いたことに始まり、さらに仏陀の教えに対しバラモン教が6つに分かれたうちの一派がヒンドゥー教です。
そのため、この3種類の教えには理念や神様、寓話に共通するものがあります。
一方、次のウダヤーディチャヴァルマン2世の時代には4度にわたる激しい戦争に苦労しましたが、優秀な将軍の力で全ての敵を降伏させました。
この王はバプーオン寺院や西バライ、西メボン寺院なども建設し、クバール・スピアンのほとんどの彫刻もこの王の時代に作られ、碑文には王の功績が刻まれています。
美しい水中遺跡
乾季にしか見えない遺跡も
不思議な形状から当初の暮らしを想像する
深い森の巨大な石に驚きながら山頂まで登ると、砂岩の川底にシヴァとその妻パールヴァティー(別名ウマー)が聖牛ナンディンに乗る姿が現れます。シヴァはヒンドゥー教3強神の一人、宇宙の創造と破壊の神で、パールヴァティーは美しく心穏やかな女神と言われ、二人はシヴァの牛にまたがって結婚式へ向かう様子が彫られています。
さらに進むと世界の守護神、ヴィシュヌの彫刻を川辺に多く見ることができます。
ヴィシュヌは宝冠をかぶり、蓮の花、ほら貝、円盤、棍棒を手に持つ4本腕の姿であると言われており、その特徴的な姿の彫刻は誰の目にも見つけやすいでしょう。
ヴィシュヌの彫刻
シバの妻パールヴァティー
シヴァの牛にまたがって結婚式
中でも有名なものは、混沌の池で蛇神アナンタの上に横たわるヴィシュヌの姿です。
ヴィシュヌの隣には彼のパワーの源で、仏教では「吉祥天」と呼ばれる美と繁栄の女神、ラクシュミーが並んでいます。
肘を曲げ手を枕に横たわるヴィシュヌのヘソからは茎が伸びて蓮の花を咲かせ、その花弁からは最高神ブラフマーが誕生したという神話の一場面を表している見事な彫刻です。
この辺りには、インドの叙事詩「ラーマーヤナ」の主人公でヴィシュヌ神の化身であるラーマ王子と、彼を助けた猿軍団の武将ハヌマンの姿の彫刻も見ることができます。
森全体が遺跡になっている
武将ハヌマンの姿
細かいレリーフがかわいい
その先には蓮の花の上で瞑想をするブラフマーや大リンガの彫刻があります。
リンガとは男性器をモチーフにしたシヴァの法力を表すご神体です。
一般的なリンガは、シヴァの神妃シャクティを表し女性器を象徴化する「ヨーニ」と呼ばれる円盤状の物体中央から、垂直に円柱が立っているような形をしています。
美しい滝と緑があふれる
リンガの巨大な火柱の姿
シヴァの法力を表す円柱
バラモン教の伝説によれば、リンガが巨大な火柱の姿で天から地上へ突き刺さった時、ヴィシュヌが八角形の鞘、ブラフマーが四角形の鞘となって地中にもぐったリンガを包んで大地を守り、シヴァの法力を表す円柱の部分だけが地上に現れたそうです。リンガとヨーニの組み合わせはすべての創造の源であり、豊穣多産を意味していると言われています。
大リンガを後にすると、下流に向かって無数のリンガが川床に彫られている「1000本リンガ」と呼ばれるエリアが始まります。
整然と並んだ円柱のリンガの上をサラサラと流れる川の水は聖水となり、直径約2mのヨニと5つのリンガのモチーフに注ぎ込んで最終目的地である小型の滝へ落ちて行きます。
円柱状のレリーフが敷き詰められている
苔むしたレリーフ
1000本のリンガ
滝までの道には岩に彫られたシヴァやガネーシャのレリーフ、ワニやカエル、古代文字の彫刻もあるので、うっかり見逃さないようにしたいものです。
丸い岩に彫られたカエルは、毒入りの水を飲もうとしたバラモン教の僧侶を身を挺して救ったという伝説のカエルですが、水辺にゴロゴロと転がる他の岩に紛れています。
滝まで来れば、クバール・スピアンの遺跡散策はゴールです。
無数のリンガの上を流れた聖水で、古代の王や人々は沐浴をしたと言われています。是非ともその川の水に手をつけて、パワーを感じてみてください。
クバール・スピアン遺跡を見学出来るツアーのご紹介
バンテアイスレイ・ロリュオス・クバールスピアン郊外3大見所ツアー
【グループ・混載ツアー】ツアーの魅力と見所:
「東洋のモナリザ」と呼ばれる美しいデヴァター像で有名なバンテアイスレイ、「川の源流」という意味を持つ水中のレリーフが美しいクバールスピアン、アンコールワットが築かれる前の王都ロリュオスこの3つのスポットはアンコールワットの共通入場券で訪れることが出来ます。
~バンテアイ・スレイ~
「女の砦」という意味を持つこの寺院は、建立当時にアンコール王朝の摂政役の王師だったヤジュニャヴァラーハの菩薩寺として建設されたといわれています。ヴィシュヌ神とシヴァ神にささげられた、周囲約400メートルの小寺院で、外壁は赤色の砂岩とラテライト、屋根の一部にはレンガが使用された美しい色合いの遺跡です。
【貸切】バンテアイスレイ・ロリュオス・クバールスピアン郊外3大ツアー
【グループ・混載ツアー】ツアーの魅力と見所:
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~バンテアイ・スレイ~
「女の砦」という意味を持つこの寺院は、建立当時にアンコール王朝の摂政役の王師だったヤジュニャヴァラーハの菩薩寺として建設されたといわれています。ヴィシュヌ神とシヴァ神にささげられた、周囲約400メートルの小寺院で、外壁は赤色の砂岩とラテライト、屋根の一部にはレンガが使用された美しい色合いの遺跡です。
クバール・スピアン遺跡の見学の注意点
持ち物、服装にご注意
中にはビーチサンダルを履いた欧米人の姿も見かけますが、岩がゴロゴロと転がる森林のトレッキングにふさわしい、滑りにくくつま先が覆われた靴を履きましょう。体力を使うため、飲料水携帯や日差し対策・虫よけも忘れずに。
入場券は無くさず、必ず持っていましょう!
突然係員から入場券を見せるように言われることがあります。入場にはアンコール・パスの検札チェックがありますが、ここではチケットの購入はできません。
入場時間規制がある場合があります。
季節や、観光客の多さで、異なる入場時間規制を行う場合がございます。
人気の少ない場所は気をつけましょう!
郊外の森林の中で、観光客は多くはありません。今なお地雷が埋まる地域もあるので、ガイドを付けて歩くことが望ましいでしょう。
クバール・スピアンの場所(Google MAP)
クバール・スピアンはシェムリアップから北へ約50km郊外の、「ライチの山」を意味する自然豊かなプノン・クーレン国立公園内に位置しています。
プノン・クーレン山にはシェムリアップ川の源流があり、クバール・スピアンはその下流のストゥン・クバール・スピアン川に沿って点在する水中遺跡です。
駐車場からは時に勾配がきつい山道を約1.5km、30~40分登り切ったところにその遺跡はあります。
ところどころに岩がゴロゴロと転がり、大岩がむき出しになった山中には、まだ地雷撤去が完了していないエリアもあるので、赤くペイントされた木や岩を見つけたら、それより先には絶対に入らないでください。
安心・安全と川に沿って点在する彫刻を堪能するために、ガイドと一緒に歩くことを強くおすすめします。