チャウ・サイ・テヴォーダ遺跡とは
About Chau Say Tevoda Remains
アンコール・トム東方「勝利の門」から500mほど東にいったところにある小寺院です。道路を挟んである「トマノン」と対になって建てられていることが分かっています。12世紀初頭にスーリヤヴァルマン2世によって建設されました。
「アンコール・ワット」や「トマノン」と同時期に建てられ、見事な彫刻が施されています。伽藍配置や建築様式も同様のものです。経年に伴う崩壊が進行中ですが、一部は中国の修復チームにより修復されました。
「トマノン」との違いは経蔵が2つあること、リンガ(シヴァ神の化身、男性性器を模している)を祀ったヨニ(シヴァ神の妃、女性性器を模している)が配置されていることなどです。
リンガとヨニが祀られていることから、繁栄や不死、豊穣の願いがこめられていることが分かります。
チャウ・サイ・テヴォーダの歴史と見所
スーリヤヴァルマン2世によって「トマノン」と対になるように建てられました。
アンコール・トムの「バプーオン」にある空中参道と同じく、円柱で支えられた空中参道があることから、アンコール・ワットの建築様式に影響を与えたと見られています。
チャウ・サイ・テヴォーダと「トマノン」との関係について、元はアンコール・トムのような大きな複合都市の一部だったという説もありますが、建てられた年代がはっきりしないのと、それぞれの目的が違うために謎のままです。
遺跡への入口である東塔門では見事なレリーフやリンテルの花葉紋様が出迎えてくれます。塔門を入ると楼門との間に王が天界を歩く様子を表現した空中参道があります。
地上と天界をつなぐ役割を果たす道という考え方がアンコール・ワット様式と同じです。
楼門を抜けると、経蔵が左右に2つ配置されているのが分かるでしょう。
「トマノン」では一つの経蔵ですが、チャウ・サイ・テヴォーダでは敷地内の美観を考えた構造になっています。
中央祠堂東の前房にリンガを設置していたと思われるヨニ(受け座)があります。リンガとヨニがセットで祀られていたことから、シヴァ神の象徴としてのリンガよりも豊穣や繁栄の守り神として大事な役目を果たしていたようです。
一般的にヨニには聖水を流す溝があり、高い治水の技術を証明する役割があります。
建立当時は寺院全体が赤い彩色で覆われていたとみられ、中央祠堂壁面のデヴァター像には赤い彩色がはっきりと残ります。当時の色彩が想像できる興味深い遺跡です。
中央祠堂は基壇の上に設置された平地型祠堂で、壁面では多数のデヴァターのレリーフが優雅にほほ笑みます。
「トマノン」と同じく、衣装や王冠飾りに見られる精緻な彫刻をじっくりと鑑賞しましょう。
この遺跡が建造された12世紀初頭は日本だと鎌倉時代にいたる混乱の最中です。
源氏と平氏という2大勢力を中心に武家が力を誇示していました。世界では十字軍が遠征を繰り広げています。
建築様式や美術に関する文化の違いはありますが、歴史の流れでは日本も世界も戦乱期にあり、アンコール王朝が一早く戦乱期を抜け出したという形になります。
そういう時代背景を踏まえつつ天上の神殿として作られたアンコールの遺跡を見ていると、人々の夢と希望が形として存在しているような気がしてくるのです。
チャウ・サイ・テヴォーダの歴史
西暦 | 王名 | 遺跡名 |
---|---|---|
1113年 〜 1150年 |
スーリヤヴァルマン2世 Suryavarman II |
建築物:アンコール・ワット、チャウ・サイ・テヴォーダ、トマノンなど |
チャウ・サイ・テヴォーダ遺跡の見学ワンポイントアドバイス
東塔門の門の内部から写真を撮ると、門の内部が暗く扉枠だけが写ります。
レリーフと一緒に撮影することで、不思議な空間に迷いこんだような写真が出来上がるでしょう。
空中回廊の土台をつとめる砂岩でできた円柱にはアプサラス(舞い踊る天女)が描かれています。
小さな隙間も飾り付けるアンコール遺跡特有の美意識を見つけてみてください。
赤く彩色されていたことがうかがえるデヴァター像を見ていると、寺院全体が赤く染まっていたことが想像でき、今とは全く違う外観にロマンがかきたてられます。
チャウ・サイ・テヴォーダのデヴァター像は「トマノン」と「アンコール・ワット」に見られるデヴァター像の変遷の途中にあるようで、トマノンと同様に優雅で精緻な彫刻ですがアンコール・ワットのように動きが軽やかなものが見つかります。
寺院全体が赤く染まっていた
緑や苔の色とマッチした石像
2つある経蔵の外壁にも見事なレリーフが残ります。周囲の緑や苔の色とマッチした、とても風情のある外観なので写真におさめるのを忘れないようにしたいものです。
「トマノン」や「アンコール・ワット」との違いを探しながら見学すると、この遺跡の建立された理由に少し近づけるかも知れませんね。
チャウ・サイ・テヴォーダ遺跡の見学の注意点
押し売りには気をつけましょう!
「アンコール・トム」から近く、周囲にも遺跡が隣接しているため土産物屋があります。
土産物屋というお金を支払う環境が整っている場所では、現地の子供が声をかけてきます。
屈託のない笑顔が印象的ですが、中にはあからさまにお金を無心する子もいますので、嫌な思いをすることがあるかも知れません。理不尽な金銭要求は断りましょう。はっきり言わないと、分かってくれないこともあります。
帽子や日よけ対策、こまめな水分摂取が必要
カンボジアは雨季と乾季をもつ熱帯モンスーン気候です。アンコール遺跡観光に最適なシーズンは乾期である11月~4月。乾期とはいえ、日中は30度くらいまで気温が上がりますので、帽子や日よけ対策、こまめな水分摂取が必要となります。
チャウ・サイ・テヴォーダの場所(Google MAP)
「アンコール・トム」の勝利の門から東へ500mほど離れた右手にあります。
バイヨン寺院からは車で3分ほど。
シェムリアップスタートだと、オールドマーケットから車で30分ほど。
東が正門で、東塔門から遺跡を巡るのが推奨ルートです。